ゴンドワナ各地の地質と岩石
オーストラリア
Australia
オーストラリア大陸は、面積約760万k㎡、東縁の大分水嶺山脈Great Dividing Rangeにそって古生代~中生代に変動を受けたタスマン造山帯Tasman beltがあるが、その西方の大半の地域は先カンブリア時代の岩石とその上を覆う顕生代以降の被覆岩層からなる。これらをオーストラリア楯状地Australian shieldという。その中でもとりわけ古い始生代の岩石が分布する地域が、西オーストラリアのピルバラクラトンPilbara craton とイルガンクラトンYilgarn craton、南部のガウラークラトンGawler cratonである。前2者は典型的なグリーンストン帯(Greenstone-granite belt)として著名であり、本資料室の標本も主にこの2地域から採集されたものである。
西オーストラリア北部のピルバラクラトンは、35~25億年前の花崗岩類とグリーンストン帯から構成され、比較的変成度が低く(緑色片岩相程度)、始生代の岩相や構造がよく保存されている(Geological Survey of Western Australia、1990)。ピルバラ地域の南部には、ハマーズレーの地層群Hamersley basinが分布する。それらは28-27億年前にFortescue Groupの大規模な玄武岩溶岩の噴出に始まる。その上位には25億年前前後のHamersley Groupが重なり、世界最大の縞状鉄鉱床(BIF:Banded Iron Formation)が存在し、Mt.Newman等で大規模な露天掘り採掘がおこなわれている。→資源と鉱石
南部のイルガンクラトンは、主として28~26億年前の花崗岩とグリーンストン帯からなる。内部は東からEastern Goldfields province、 Norseman-Wiluna belt、 Southern Cross province、 Murchison province、 Western gneiss terrainの5つの地帯に区分される(Solomon and Groves、 1994)。このうちWestern gneiss terrainには、30億年を超す変成岩類(Jimperding belt)がある。また北部のNarryer gneiss complexは特に古く、36億年前のMeeberrie gneissやBIF、37億年前のAn成分に富んだ斜長岩を含む斑れい岩体(Manfred complex)があり、Jack Hillsには44~40億年前のジルコンを含む 珪岩がある (Aaron et al., 2007)。Eastern Goldfields、 Norseman-Wiluna、 Southern Cross、の3地帯は一大鉱産地であり、特にKargoorlie一帯には大規模な露天掘り金鉱山が多数あり、南のKambaldaにはニッケルの大鉱山がある。いずれもグリーストン帯のkomatiiteに伴われる。長柱状に伸びたかんらん石からなる急冷組織を持つ岩相をspinifexed komatiiteというが、それはこの地域一帯の乾燥地帯にはえる植物の形態にちなんでいる。当資料室には20cm以上に達するspinifexを含むkomatiiteやイルガンクラトン各地の金鉱床とその母岩、グリーンストン帯の構成岩相の一式(超塩基性~塩基性~中―酸性の火山岩・火山砕屑岩、含金礫岩など)が収納されている。
ピルバラとイルガン両地塊に挟まれた地域では、20~16億年前くらいに両地塊の衝突によりCapricorn造山帯が生じ、その中のGascoyne provinceには変形した花崗岩(augen gneiss)が産出する。イルガンクラトンの南部から西部のインド洋岸に沿って原生代後期の造山帯Albany-Fraser beltが分布する。ゴンドワナを復元すると、この地帯の延長上に中央インド構造帯~Meghalayaがあると考えられる(Harris、 1993)。Leeuwin complexは、オーストラリアの南西端にあり、Albany beltの一部を構成し、主にグラニュライト相変成岩とcharnockiteからなる。
大陸中央部には、原生代後期のAmadeus basinの堆積岩類が分布し、その下位には原生代中期の変成岩や花崗岩からなるArunta地塊やMusgrave地塊が分布する。観光地として有名なUluru(Ayers rock)やMt. OlgaはAmadeus basinの石英に富む粗粒砂岩や礫岩からなる。そのため、Uluruの急崖もフリクションを利かして登ることができるが、時には転落して死者も出る。
北部のKimberley地域には、玄武岩や珪岩などからなるKimberley basinがある。これらは原生代早期~中期のplatform的な被覆岩層であり、ダート道を500km走破してもほとんど水平な地層が連続し、下位に始生代の安定地塊が伏在することを暗示する。キンバリー地塊の東側はHalls Creek belt、西側はKing Leopold beltという20~18億年前前後の造山帯に取り巻かれる。東側では、原生代早~中期の地層を貫いてダイアモンドを含む12~10億年前のlamproiteの岩脈があり、Argyle鉱山が稼動している (Hughes,1990)。
クインズランド州北部のMt.Isa地域には、原生代早期の地層が19億年前前後にBarramundi造山運動を受けてできた変成岩類とそれらを貫く花崗岩類からなる地塊(Mt.Isa Inlier)と、その両側に原生代中期のrift的な堆積層が分布する。Mt.Isa鉱山は、16億年前のriftの堆積層Mt.Isa Groupの黒色泥岩中にある層序規制型strata bound typeの銅・鉛・亜鉛・銀の世界的な大鉱山である(Hughes, 1990)。またMary Kathleen GroupにはU鉱床がある。
各標本の主たる採集地域と年度は以下のとおりである(詳細は「ゴンドワナ資料室標本カタログ実物で見る地球史40億年、2012、山口大学」を参照されたい)。
- 1977年 Yilgarn地域(Perth近郊、Kambalda鉱山)
- 1995年 Yilgarn、Pilbara、Mt.Isa、Leeuwin、Albany地域など
- 2002年 Yilgarn北部、中央~北部オーストラリア原生代変動帯
- 2004年 Pilbara地域
- 2012年 Tasman belt、Broken Hill、Adelaidean
参考文献
- Aaron, J.C., Valley, J.W. and Wilde、 S.A. (2007) The oldest terrestrial mineral record: A review of 4400 to 4000 Ma detrital zircons from Jack hills, Western Australia. In Earth’s oldest rocks (van Kranendonk, M.J., Smithies, R.H. and Bennett, V.C. eds.), 91-111. Elsevier.
- Geological Survey of Western Australia (1990) Geology and mineral resources of Western Australia (with maps). 827p.
- Harris, L.B. (1993) Correlations of tectonothermal events between the Central Indian Tectonic Zone and the Albany mobile belt of Western Australia. Gondwana Eight (Findlay, Unrug, Banks and Veevers,eds.), 165-180.
- Hughes, F.E. ed. (1990) Geology of the mineral deposits of Australia and Papua New Guinea, vol.1. Australian Institute of Mining and Metallurgy, 982p.
- Solomon, M. and Groves, D.I. (1994) The geology and origin of Australia’s mineral deposits. Oxford Science Publications, 951p.