標本室・資料室のご案内
実物で見よう!
地球史40億年の記録、世界と日本の岩石・鉱物
20世紀、科学・技術は素晴らしい進歩をとげました。しかし科学が進めば進むほど、まだ分らないことがいっぱいあることが分ってきました。地球科学は、そんな21世紀の科学のフロンテイァの1つです。
私たちは、母なる大地のめぐみ(資源)を受けて生きています。では地球についてどのくらい知っているのでしょうか?地球が誕生して46億年、今までどんなことがあったのでしょうか?
地球科学標本室には、世界各地に実際に行って採集された“実物”があり、教科書やパソコン上の画像としてではなく、本物にふれて学べるように工夫しています。
博物館の役割
新しい事実の発見こそ、科学の進歩の原動力です。新事実の発見のためには、すでに分っているものとどこがどう違っているのか、を明らかにしないといけません。私たちは、巨大な地球のまだほんの一部しか知らないのです。そこで自然界の1つ1つの現象を調べ上げ、記録し、形あるものを標本として保存しておく必要があります。これも大学の重要な使命*の1つです。記載・分類の学は、すでに終わった学問ではなく、未来に開いた新しい領域への入口なのです。
*山口大学には、学術資産継承委員会という組織があって、大学から経費を頂いて研究試料を学術資産として次代に受け継ぐため活動しています。→学術資産継承事業委員会
利用案内
地球科学標本室(ゴンドワナ資料室)
地球科学標本室(理学部410号室)は学生の皆さんへの実物教育を、ゴンドワナ資料室(420号室)は研究試料の保存・継承を主な目的としていますが、両者を合わせてみると色々な見学コースが設定できます。教科書や論文などで著名な地域の地質現象を、実物を見ながら理解を深めて下さい。[→見学コース案内]
ガラスケースには代表的な標本が、下の引出には小型の標本が収納されています。標本番号とラベルの表示、備え付けの標本カタログを参考に見て下さい。
学生の皆さんへ
xx石ってどんなもの? △△帯ってなんなの? 分からない用語が出てきた時には、理学部1号館4階の標本室(410号室と420号室)に行って実物を見ましょう。
ほう、ざくろ石はこんな結晶か、おお、これが教科書に書いてあった40億年前の岩石か!
“百聞は一見にしかず”、当標本室は学生の皆さんが授業で聞いたことを、自分の目で実物を見ながら学習できるように、という目的で開設されました。いつでも開放しています。
利用上の注意
見学の際には以下の注意を守って下さい。
- 標本は手にとって見ても良いですが、必ず元の場所に戻して下さい(ラベルと実物が異なると、次の人が間違えてしまいます)。カギのかかった所は開けないで下さい。
- 鉱物標本は、繊細で壊れやすい「地球の芸術品」です。乱暴に扱わないでください。角をもいだり、容器を逆さにしたり振ったりしないで下さい。
- 容器やポリ袋に入っている標本を出して、直接触ってはいけません。
- 引出は開けたら閉め、元どおり鎖をかけて下さい(地震対策です)。
標本検索と標本番号
各標本とそのラベルには、以下のような標本番号がつけられています。備え付けのカタログから標本の種類・名称と標本番号を引いて下さい。標本棚と引出の表示を見ると、標本番号から、目的の標本がどのあたりにあるか分かります。
標本検索はこちらから
標本の区分と標本番号
全ての標本は、「鉱物」、「岩石・鉱石」、「化石」の3つのカテゴリーに区分し、以下のような標本番号をつけて所定の場所に収納されています。
鉱物 | 標本番号は黒字で、4~5桁の数字と末尾に地域を表すアルファベットをつけて、鉱物標本の引出に入っています。頭の数字1-9は鉱物学的な分類を示します。 |
---|---|
岩石・鉱石 | 標本番号は赤字で、頭にアルファベットと3~4桁の数字で表し、地域ごとにまとめて入っています。 |
化石 | 標本番号は赤字で、頭にFSと3桁の数字で表します。 |
一般に鉱物は、何種類か伴って岩石の一部として産出します。いくつかの鉱物が集まっている場合、たとえ小さくても、特定の鉱物を示したい場合は鉱物標本とします。いっぽう鉱物標本として立派でも、産地の状況を知るためには種類別に分散するより、そこに産出する鉱物をセットとして収納した方が良い場合もあります。その場合は「岩石・鉱石」の棚に入っています。どちらにするかは、採集者あるいは担当者の判断によります。少々面倒ですが、ある「鉱物」を検索する時には、「鉱物標本」だけでなく「岩石・鉱石」の項目も見て下さい。
地名
地名表記は時代とともに変わります。ここでは“武蔵の国”などという古い国名を県に直した以外は、採集あるいは登録された時点でのラベルの記載に従うこととします。市町村合併の結果、同じ産地が異なった地名で表記されることもありますが、そもそも地名には歴史的ないわれがあり、それを無視すべきではないと思います。また知る人ぞ知る、古い地名で○○産のxx石と言った方が通りが良い場合もあります。
鉱物標本の種類
鉱物は、化学組成の特徴により以下の9つのカテゴリーに分けて分類し、標本番号の頭の数字がその分類を示します。珪酸塩鉱物は、結晶構造の特徴によりさらに区分します。標本番号の末尾のアルファベットは、岩石標本と同様の産出地域を表します。各カテゴリーの中では、なるべく鉱物種ごとにまとめてナンバリングしてありますが、整理の都合上、必ずしもそうなっていない場合もあります。
1001~ | 元素鉱物 Native elements |
---|---|
2001~ | 硫化鉱物・硫塩鉱物 Sulphides(Sulfides)、Sulphosalts |
3001~ | 酸化鉱物 Oxides |
4001~ | ハロゲン化鉱物 Halides |
5001~ | 炭酸塩鉱物 Carbonates |
6001~ | 硫酸塩・硝酸塩・ホウ酸塩鉱物 Sulphates(Sulfates)、 Nitrates、 Borates |
7001~ | 燐酸塩・砒酸塩・バナジン酸塩鉱物 Phosphates、 Arsenates、 Vanadates |
8001~ | タングステン酸塩・モリブデン酸塩・クロム酸塩鉱物 Tungstates、 Molybdates、 Chromates |
9001~ | 珪酸塩鉱物 Silicates |
0001~ | 有機鉱物・人工鉱物 Organics、Artificials |
岩石・鉱石標本
岩石・鉱石は、以下の地域ごとに分け、北海道から順に地域をアルファベットで、試料番号を3桁(100個を越えれば4桁)の数字で表します。
A001~ | 北海道の岩石・鉱石 (Hokkaido) |
---|---|
B001~ | 東北地方の岩石・鉱石 (Tohoku) |
C001~ | 関東地方の岩石・鉱石 (Kanto) |
D001~ | 中部地方の岩石・鉱石 (Chubu) |
E001~ | 近畿地方の岩石・鉱石 (Kinki) |
F001~ | 中国地方の岩石・鉱石 (Chugoku) |
G001~ | 四国地方の岩石・鉱石 (Shikoku) |
H001~ | 九州・沖縄の岩石・鉱石(Kyusyu、 Okinawa) |
Y001~ | 山口県の岩石・鉱石 (Yamaguchi Pref) |
K001~ | 韓半島の岩石・鉱石 (Korea) |
W001~ | 世界各地の岩石・鉱石 (World) |
化石標本
FS101~は古生代、FS201~は中生代、FS301~は新生代を表します。
標本番号から試料を探し出すには
以上のように、数字とアルファベットの組み合わせにより、種類と地域が分かるようになっているので、標本リストの標本番号から、所定の引き出しをあければその試料を見ることができます。
例えば、山口県産の珪酸塩鉱物をリストアップするには、頭が9で末尾がYの試料を選べば良いことになります。
石ってなあに?
小さくても、とっても高価なもの -それは“石”!
文明の世の中になくてはならないもの -それは“石”!
人類は“石”を利用して文明を築いてきました。人類が最初に手にした道具は石。鉄も銅も金も“石”から取り出します。ハイテク機器に欠かせないセラミックスはまさに石そのもの。
世の中にありふれたもの -それも“石”、しかし“石”こそ地球型惑星の特徴
およそ46億年前、太陽系が誕生した時に、固くて重い“石”でできた惑星は内側に、軽いガスでできた惑星は外側にできました。アポロ宇宙船で人類は初めて月に行きました。宇宙探査ロケットハヤブサは60億キロを旅して小惑星イトカワから帰還しました。
何しに行ったの?
-石をとってきたのです。
何のために?
-太陽系の起源や宇宙の成り立ちをとくかぎがあるから。
鉱物と岩石はどうちがうの?
鉱物は、規則正しい原子(イオン)の配列(結晶構造)をもち、一定の化学式で表わされる物質です。例えば「石英」という鉱物は、三方晶系(または六方晶系)に属する結晶構造をもち、結晶のどの部分をとってもSiO2の組成を持っています(六角柱状の石英の結晶が水晶です)。一方、岩石は、鉱物の集合体です。「花崗岩」という岩石は、石英・長石・雲母などの鉱物からできていて、部分により構成鉱物の種類や量が違うので不均質です。逆にどのような鉱物が、どのように集合しているか(岩石組織という)を調べると、岩石のでき方や形成条件を知ることができます。「いし」と言ってごっちゃにせず、「岩石」と「鉱物」を区別するところから科学が始まります。
何気なく石なんていって、けとばしているものの中に、いろいろな不思議や科学の世界があることを、ご覧下さい。