鉱物・岩石基礎知識
5。日本列島の地質構造区分と主な地質体
5.1 日本列島の形成に関する考え方
日本列島を構成する主な地質体の名称は現在もあまり変わっていないが、それらがどのようにして形成されたか、地質学的成り立ちに関する考え方は、1970~80年代を境として大きく変換した。
[地向斜造山論-古典的造山論]:
地向斜造山論というのは、ヨーロッパアルプスなどを主なフィールドとして、1920年代頃にStilleなどによってまとめられた考え方である。まず大きな向斜構造(地殻の中のくぼみ)ができて、まわりの陸地から堆積物が集まって厚く積もり、地下深く沈降した部分はやがて変成岩に変わり、横圧力を受けて褶曲山脈ができる。変成帯の中心部では一部が溶け出して花崗岩が形成され、花崗岩は軽いので全体が上昇する、というモデルである。
1940~50年代の日本では、小林貞一博士が秋吉台や高知県の佐川町付近の研究から、日本列島の骨格は古生代末の秋吉造山運動と中生代後半の佐川造山運動によって形成されたとした。秋吉造山運動でできた変成帯が飛騨帯と三郡帯であり、佐川造山運動でできたのが領家帯と三波川帯である。1950~60年代は、これに対して湊正雄博士などが、日本列島は古い地質体の飛騨帯を基盤にして、主に古生代後半にかけて安倍族造山運動(山下昇博士ほかでは本州造山運動)でできたと主張した。両者とも地向斜造山論に基礎をおいていたことは同じである。
[プレートテクトニクス]:
1960~70年代になると、米国を中心に海洋底拡大説からプレートテクトニクスへ、次第に形が整えられてきた。地向斜造山論では両側に堆積物を供給する陸地があることが前提となる。そもそもこの考え方はアルプスで生まれたものであり、ヨーロッパではバルト楯状地とアフリカ楯状地の間にできた地向斜から出発してアルプス山脈ができたと考えることができる。ところが環太平洋造山帯のように、大陸と海洋の間にある造山帯では陸地は片一方しかなく、説明がつかないのである。これを明らかにするには海洋の地質学が不可欠であり、その進展を待たねばならなかった。
日本の場合、1970年代後半から80年代にかけて、「地向斜」の母体となった堆積岩の年代が大きく改変されたことが重要な契機となった。それまでは「秩父古生層」といって、古生代のチャートや石灰岩からなる地層が造山運動を受けた、と考えられていたのであるが、チャート中のコノドントや放散虫などの微細な化石の研究がすすんだ結果、多くが中生代のジュラ紀あたりにできた地質体であることがわかってきた。さらに日本列島の地質体の多くは、堆積岩や火成岩が複雑に混在した付加体と付加体起源の変成岩から構成され、海溝域の沈み込み帯にできた、と考えられるようになった。
5.2 日本列島の地質構造区分
地質構造区分は、構成岩石の性質や年代と地質構造などの地質学的な特徴を考慮しながら、主要な構造線(大きな断層帯)に基づいて行う。日本列島は、まず糸魚川-静岡構造線(糸静線)で東北日本と西南日本に二分する(両者の境界をさらに北の棚倉構造線とする見解もある)。次に西南日本を、中央構造線(MTL)で西南日本内帯と外帯に区分する。時間軸から見ると、新第三紀以降の火山岩類に広く覆われた地域とその下にある古い地質体が露出している地域に分ける。前者はグリーンタフ地域といい、東北日本を中心に分布し、熱水変質を受けた火山岩類の中に多くの鉱床が分布する。新第三紀以前の古い地質体は、西南日本に広く露出する。
図6に西南日本の主要な地質区分を示す。この図は古典造山論に基づいて作られたもので、時代論や構造的な位置づけが大きく改変されたことは前述のとおりである。しかしそれらの名称は現在も広く用いられており、構成岩石の種類や平面的分布の大要はあまり変らない。よりシンプルに西南日本の全体像がわかるので、この図を用いる。近年、新しい構造論に基づく詳しい地質区分が提唱されており、不十分と思う方は、例えば「基礎地球科学」第2版p161の図などを参照していただきたい。
良く知られている西南日本の主要な地質体とその特徴は、以下のとおりである。
西南日本内帯
◎飛騨帯(?~古生代後期~中生代前期の低圧~中圧型変成岩と同時期の花崗岩)
◎飛騨外縁帯(古生代後期の付加体と高圧変成岩・蛇紋岩)
◎美濃・丹波帯(一部古生代、大半が中生代ジュラ紀の非変成付加体)
◎領家帯(美濃・丹波帯を原岩とする中生代後期の低圧型変成岩と花崗岩)
[なお旧来の中国帯(三郡帯)は、蓮華帯(飛騨外縁帯相当)、秋吉帯(古生代付加体)、周防帯、丹波帯相当層などに区分されている。→山口県の地質]
-中央構造線-
西南日本外帯
◎三波川帯(中生代付加体を原岩とする中生代後期の高圧型変成帯)
◎秩父帯(大半が中生代ジュラ紀の非変成付加体)
-仏像構造線-
◎四万十帯(北部は中生代後期、南部は古第三紀の非変成付加体)
この中で飛騨帯は、他と性質を異にしており(付加体起源ではない)、かつてアジア大陸の一部を構成していた花崗岩や花崗岩質の変成岩からなる大陸性の地塊であると考えられる。それ以外はアジア大陸の縁にできた付加体とそれに由来する変成帯から構成され、基本的に大陸側から太平洋側に向かって若くなる傾向がある。
5.3 日本の各地方の地質
以下に展示標本に関連して、日本の各地方の主な地質体についてごく簡単な解説をつける。具体的に地名や鉱山名をあげた標本は大方そろっているので、説明を参照しながら観察すると理解を深めることができる。各地域にはそれを専門とする研究者がいて詳細な研究が行われ、様々な議論があり、まだ未決着のことも少なくない。詳細は個別に文献にあたって欲しい。例えば、日本の地質1~9(共立出版)、日本地方地質誌1~8(朝倉書店)などを参照されたい。
A. 北海道地方
北海道は、中央部に南北に延びる日高帯と神居古潭帯を中心に、その東側に中生代後半(ジュラ紀~白亜紀)の常呂帯と白亜紀~古第三紀の根室帯が、西側には中生代後半の空知層群や蝦夷累層群が配列する。さらに西側には石狩炭田を含む古第三紀の石狩層群、また石狩低地帯の西側には北部北上帯の延長と考えられる地質体が分布する。こうした基盤の上に、千島弧内帯の北見地域、東北日本弧内帯の渡島半島地域に新第三紀火山岩が分布し、さらにこれらの地域と中央部の大雪山地域を第四紀の火山噴出物が広くおおっている。
日高帯は、北海道の中軸日高山脈に沿って分布し、中生代の日高累層群とそれらに由来する変成岩と花崗岩類(ミグマタイト)、斑れい岩やかんらん岩(幌満かんらん岩体が有名)などから構成される。グラニュライト相の高度変成岩もあり、古~新第三紀に形成された島弧地殻の深部断面が出ていると考えられている。神居古潭帯は、日高帯の西側に並走する高圧型変成岩と蛇紋岩からなる地帯である。白亜紀後半から古第三紀にかけて形成された。
蝦夷累層群は、主に泥岩・砂岩からなる中生代白亜紀の地層で、天塩山地から夕張山地にかけて日高帯の西側に分布し、上部層からアンモナイトやイノセラムスの保存の良い大型化石が産出する。
B. 東北地方
東北地方は、おおむね北上川-阿武隈川に沿った低地帯を境として、太平洋側に北上帯と阿武隈帯があり、脊梁山地及びその西側は新第三紀以降の火山岩優勢地域(グリーンタフ地域)となる。火山岩優勢地域にも、大平山地・朝日山地・飯豊山地などに中生代の花崗岩などが存在し、火山岩類の下位に中生代以前の基盤構造が延びていると推定される。
北上帯は北上山地を構成し、早池峰山付近を通る北西‐南東の断層帯(早池峰構造線)により、北部北上帯と南部北上帯に区分される。北部北上帯は、主に砂岩・泥岩・チャートと少量の石灰岩・火山岩などからなり、中生代ジュラ紀~白亜紀前期の付加体とされる。南部北上帯は、古生代シルル紀から中生代白亜紀までの化石を含み、浅海性の非変成の石灰岩や泥岩・砂岩を主体とした地層から構成される。大船渡付近ではシルル紀川内層の下位に氷上花崗岩があるとされる。北上帯には白亜紀の花崗岩体(120-110M)が広く分布し、釜石鉱山は古生層の石灰岩と花崗岩の境界部に出来た鉄・銅のスカルン鉱床である。
阿武隈帯は、西側を棚倉構造線、東側を双葉断層で境され、主に白亜紀花崗岩と変成岩から構成される。東縁部の双葉断層と畑川破砕帯に挟まれた地帯には、松ヶ平、割山、山上、八茎など変成岩の小岩体が分布し(松ヶ平-母体変成岩)、北上帯の母体変成岩に相当する古い基盤岩とされる。南部には御在所-竹貫変成岩、南端の日立地域には日立変成岩(cf。関東地方)が分布する。福島県石川町などには阿武隈山地の花崗岩に伴ってペグマタイトの大産地があり、各種の稀産鉱物を産する。
東北地方の大半、日本海側は新第三紀以降の若い火山岩や堆積岩類でおおわれる。それらは全体に熱水変質を受けて緑簾石や緑泥石を生じ緑色を示すことが多いので、グリーンタフ地域と呼ばれている。秋田県大館付近から十和田湖周辺(北鹿地域)には、約2000万~1500万年前の中新世にできた黒鉱鉱床や熱水鉱床が多数あった。黒鉱鉱床では花岡鉱山・小坂鉱山など、熱水鉱床では尾去沢鉱山などの大鉱山があり、尾太鉱山や太良鉱山・荒川鉱山などでは各種の美しい鉱石鉱物を産した。
C. 関東地方
関東地方北部、日立地域には阿武隈帯に続く白亜紀花崗岩と日立変成岩が分布する。
日立変成岩は、茨城県北部に分布し、約5億年前のカンブリア紀と石炭紀~ペルム紀の岩石が白亜紀に広域変成を受けた地質体で、日立鉱山など含銅硫化鉄鉱床を含む。
足尾山地から八溝山地にかけては、主にチャートや砂岩・泥岩と石灰岩を含むジュラ紀付加体(足尾帯)が分布する。群馬・新潟県境付近、谷川岳周辺から利根川・片品川上流にかけて、新第三紀以降の火山岩などの下位に、蛇紋岩や結晶片岩、変成苦鉄質火成岩などからなる小岩体が分布し、これらをまとめて上越変成帯と呼んでいる。
関東山地には、北側から三波川帯・秩父帯・四万十帯に相当する地層が分布し、西南日本の地質体配列の連続が認められる。北部の筑波山地には花崗岩と変成岩の小岩体があり、領家帯に相当すると考えられている。また丹沢山地には、新第三紀の丹沢層群中に中新世の深成岩が貫入し、その周囲に丹沢変成岩が分布する。小笠原諸島では、ボニン岩(Mgに富む安山岩)の産出が知られている。
D. 中部地方
糸魚川-静岡構造線の西側、西南日本には新第三紀以前の日本列島の基盤構造が良く現れている。北から南に日本海側(大陸側)から太平洋側に向かって、飛騨帯・飛騨外縁帯・美濃帯・領家帯・[中央構造線]・三波川帯・秩父帯・四万十帯の順に東西方向にならんで分布し、太平洋側に向かってより新しい地質体が配列する。ただし白亜紀後半~古第三紀には、流紋岩や花崗岩など珪長質の火成岩がそうした配列にまたがって各地に分布する。中部地方の北東側、長野~新潟方面には、主に新第三紀~第四紀の火山岩の優勢な地層が広く分布する。その下位には上越変成岩などの基盤岩が点在するが、西南日本の地質体との関係はよく分かっていない。
飛騨帯は、宇奈月変成岩と飛騨片麻岩・飛騨花崗岩(古生代後期~中生代早期)から構成される。宇奈月変成岩は、石炭紀の石灰岩を含む地層が古生代末に変成したもので、日本では最も典型的な中圧型変成岩である。飛騨片麻岩は、主に古生代後期~中生代早期の変成作用を受けた花崗岩~閃緑岩起源の正片麻岩と石灰岩を含む堆積岩源片麻岩から構成される。従来から東アジアの先カンブリア時代の岩石との類似性が指摘されてきたが、年代はまだ確定していない。もとの堆積岩の年代はよくわからないが、起源物質として20億年以上の古い砕屑性ジルコンが含まれる。
飛騨外縁帯は、飛騨帯の周囲に分布し、古生代の付加体堆積物と蛇紋岩・高圧変成岩(ヒスイ輝石の産出で有名)、シルル系・デボン系石灰岩から構成される。福地にはオルドビス紀のコノドント化石を含む地層(一重ヶ根層)がある。
美濃帯は主にチャートや砂岩・泥岩、石灰岩からなり、多くがジュラ紀の付加体であるが、その中の上麻生礫岩には20億年を越える古い片麻岩の礫が含まれる。チャート中には田口鉱山などのマンガン鉱床がある。飛騨帯から美濃帯にかけて、白亜紀後期の濃飛流紋岩類(流紋岩および同質の火砕岩)が分布する。
中部地方の南部では、美濃帯の堆積岩が低圧型の変成岩に変わり、大量の花崗岩類に貫入される。これが領家帯で、低温部では紅柱石が、高温部では珪線石がでる。変成岩も花崗岩も年代的には大差なく、白亜紀後期を示す。領家帯の花崗岩類は、濃飛流紋岩に覆われる古期領家花崗岩とそれらを貫く新期領家花崗岩に区分される。
美濃帯から領家帯にかけて、白亜紀後期~古第三紀の花崗岩類が広く分布する。岐阜県中津川の苗木地域は、その中のペグマタイトに伴い各種の稀産鉱物やSn,Bi,Sbなどの鉱床があることで有名である。
さらに南は中央構造線MTLをへだてて三波川帯となり、近畿地方から四国・九州佐賀ノ関まで連続する。南アルプス赤石山地は主に四万十帯である。
E. 近畿地方
北部は舞鶴帯と丹波帯、その南部は領家帯、紀ノ川沿いのMTL以南は三波川帯である。舞鶴帯には夜久野塩基性岩類と大江山などの蛇紋岩体があり、河守鉱山などがあった。丹波帯は基本的に中生代付加体であり、チャート中には多くのマンガン鉱床が存在する。
領家帯は、中部地方から近畿地方をへて山口県柳井地域に東西に伸びる変成帯である。古期領家花崗岩は、片理を有するやや苦鉄質の岩石(トーナル岩や花崗閃緑岩)が多く、生駒山などの斑れい岩をともなっている。京都府笠置~奈良県北部~三重県伊賀地方には、近畿領家帯の変成岩・花崗岩がよく産出する。丹波帯中には、鞍馬山や大文字山、茨木など、岩株状の白亜紀後期の花崗岩体が点在する。同時期の田ノ上山岩体はトパーズなどを産するペグマタイトがあることで有名である。兵庫県北部の明延・生野は、古来有名な銅・スズなどの多金属鉱脈鉱床である。二上山には瀬戸内系の火山岩が分布する。
F. 中国地方
島根県隠岐道後には、飛騨片麻岩によく似た変成岩が分布し、約20億年前の古い年代を示す岩石(角閃岩など)がある。中国山地には、秋吉台などの石灰岩をふくむ古生代~中生代の付加体と高圧型変成岩や蛇紋岩が分布する。これらは、従来中国帯あるいは三郡帯と呼ばれてきたが、古生代の蓮華帯(山口県の長門構造帯に分布)と中生代早期の周防帯に区分することが提唱された。山口県岩国地域には、古生代付加体の錦層群や中生代高圧変成岩の都濃層群が分布する。一方、山口県西部には美祢層群などの中生代前期の陸棚性堆積岩があり、また中国山地には阿武層群や高田流紋岩などの中生代後期の酸性火山岩類の分布も広い。
西南部には美濃・丹波帯に相当する玖珂層群と、中生代後期の領家変成岩と領家花崗岩が分布する。領家花崗岩は、岩相上、変形の顕著な古期花崗岩と新期花崗岩に区分されてきた。また瀬戸内側には、広く白亜紀後期の花崗岩(山陽花崗岩あるいは広島花崗岩)が、日本海側には主に古第三紀の山陰花崗岩が分布する。こうした花崗岩類に伴って山陽側には、喜和田・玖珂・藤ケ谷などのスカルン型タングステン鉱床が、山陰側には大東などのモリブデン鉱床や砂鉄が産出する。
この地域の詳細は、山口県の地質の項と標本室備え付けの「山口県の岩石図鑑」や新刊の「山口県地質図および説明書」を参照して欲しい。→山口県の地質
G. 四国地方
四国は、西南日本外帯の地質体の帯状配列が最もよく見られる地域である。北側には、領家帯の一部と瀬戸内系の火山岩類(高Mg安山岩-讃岐岩)や和泉層群が分布する。MTLを境に急峻な四国山地となり、三波川帯の高圧変成岩が分布する。このうち別子鉱山地域は、三波川帯で最も高変成度の岩石が分布する。特に東赤石山にはかんらん岩体があり、これに伴ってエクロジャイトが出るので有名である。三波川帯には、このほか柘榴石角閃岩、紅簾石片岩、礫岩片岩、藍晶石片岩など特徴的な岩石が出現する。また三波川変成岩の原岩には、枕状構造を有する玄武岩や同質の凝灰岩などが含まれる。中央部の汗見川は、変成度の低い部分から一連の変成度の上昇が見られるルートである。
三波川帯の南側は秩父帯であるが、その中には断続的に高度の変成岩(柘榴石角閃岩)や変成花崗岩とシルル系石灰岩を含むレンズ状の地質体があり、黒瀬川構造帯と呼ばれている。仏像構造線を挟んで、南側は四万十帯である。三波川帯と四万十帯との関係、変成作用とその原岩についてはなお多くの議論がある。四万十帯は、大半が砂泥互層やチャートからなる中生代後期~古第三紀の付加体である。その中には新第三紀の高月山花崗岩などのS-type花崗岩や足摺岬のA-type花崗岩などが貫入している。
H. 九州・沖縄地方
九州北部から南部にかけて、従来の三郡帯・領家帯・三波川帯・秩父帯・四万十帯相当の岩石が分布する。中央部一帯は広大な阿蘇カルデラとその噴出物が分布する。また新第三紀~第四紀火山噴出物の分布も広く、馬上・鯛生など多くの金鉱床があった。南部では霧島~桜島の現世火山が分布し、現在日本唯一の金鉱山である菱刈鉱山が稼働している。
九州から琉球列島にかけて、長崎県野母半島や沖縄本島、石垣島などに、三郡-蓮華帯、周防帯、三波川帯、四万十帯に対応すると考えられる変成岩や付加体堆積岩類が分布する。また北部九州の背振山地や福岡県~大分県には、変成岩や花崗岩類が点在し、領家帯との関連が議論されている。
中部九州には、阿蘇山火山噴出物の下位に、環状岩脈をともなう新第三紀のカルデラ構造と大崩山花崗岩があり、その周辺には多数のSn,Cu,Pb,Zn,Asの鉱床(尾平、木浦、土呂久、豊栄、見立など)が分布する。またグラニュライト相の高度変成岩をともなう肥後変成岩や黒瀬川帯につながる古期岩類が断続的に分布する。南部九州には、新第三紀の尾鈴山酸性岩類が分布し、大隈花崗岩(シュードドタキライト?を伴う)や市房山花崗岩、大きなカリ長石斑晶をもった屋久島花崗岩などが四万十帯に貫入している。