鉱物・岩石基礎知識

3.岩石

3.1 岩石の産状と成因的分類

岩石は、それぞれの成因に応じて特有の産状を示す。したがって産状が分かれば成因が推定できるのであるが、産状を直接確かめることができないことも多い。しかしこれまでの研究により、岩石の性質(特に組織や構造)と産状(成因)との関係が知られているので、逆に小さなカケラでも鑑定できれば、その産状や成因を推定することができる。これは、地質学を学んだ者だけができる「特技」であるから、しっかり身につけると大いに役に立つ。

岩石は産状(成因)によって、大きく以下の3種類に区分される。
 A. 火成岩:マグマ(珪酸塩溶融体)が固結したもの
 B. 堆積岩:堆積物質が沈積、固化(岩石化-続成作用という)したもの
 C. 変成岩:既存の岩石が固相状態で変形・再結晶したもの

[岩石の鑑定(分類)の基本]:岩石は鉱物の集合体である。そこで岩石の分類は、(1)構成鉱物の種類と量比、(2)組織と構造、の組み合わせにより行われる。単に「いし」と言って、鉱物と岩石をごっちゃにしては訳がわからなくなるのである。まず岩石の分類の基本を火成岩について学んで見よう。

 

3.2 火成岩類

[構成鉱物(造岩鉱物)]:岩石は鉱物の集合体である。したがって構成鉱物の種類と量比によって、いろいろなバラエティーが生じ、同じ岩石でも部分によって少しずつ性質が異なることがある。岩石を作る鉱物を造岩鉱物といい、たいていは珪酸塩鉱物である。主な造岩鉱物は以下の6種類である。しかもかんらん石と石英やカリ長石などは一緒に出ないので、2~3種類の主要な鉱物の組み合わせで分類できる。標本室には、以下の主要造岩鉱物とその岩石における産状が示してあるので、両方を見比べてもらいたい。

◎苦鉄質鉱物(マフィック鉱物あるいは有色鉱物):
MgやFeを主成分とし、一般に濃い色をもつ鉱物である。次の4種類が主要なものである。
 かんらん石 Olivine   (Mg,Fe)2SiO4
 輝石 Pyroxene     (Mg,Fe)SiO3、CaMgSi2O6 など
 角閃石 Amphibole   Ca2(Mg,Fe)5Si8O22(OH)2 など
 雲母 Mica       K2(Mg,Fe,Al)6(Si,Al)8O20(OH)4 など

◎珪長質鉱物(フェルシック鉱物あるいは無色鉱物):
一般に無色(白色)の鉱物で、次の3種類が主要なものである。
 石英Quartz SiO2
 長石Feldspar
  カリ長石K-feldspar KAlSi3O8
  斜長石Plagioclase NaAlSi3O8 -CaAl2Si2O8

岩石の区分には、有色鉱物(苦鉄質鉱物)の量(色指数)を目安にすることができる。色指数とは岩石全体に占める苦鉄質鉱物の体積比である。すなわち、
 白っぽい岩石(優白質岩):色指数(10~20以下)を珪長質岩
 中くらいの岩石    :色指数(20~40)を中間質岩
 黒っぽい岩石(優黒質岩):色指数(40~70)を苦鉄質岩
 ほとんど有色鉱物からなる岩石:色指数(70~)を超苦鉄質岩、という。

[化学組成]:岩石は鉱物の集合体である。したがって構成鉱物の種類と量比を反映した化学組成を持つ。鉱物がある一定の化学組成を持つのに対し、岩石の化学組成は連続的に変化する。地殻中では酸素が大量にあるから、岩石の化学組成(主要成分)は、酸化物の形で表す。普通の岩石は、SiO2が50%から80%を占めるので、SiO2(珪酸分)の量で種類を決めることができる(化学でいう酸性・塩基性とは違うことに注意)。そこで、
 珪酸分の多い岩石(63-66%以上)を酸性岩
 やや少ない岩石(52-3%以上)を中性岩
 少ない岩石(52-3%以下)を塩基性岩
 うんと少ない岩石(45%以下)を超塩基性岩、と呼ぶ。

こうした区分は、おおむね色指数による区分と対応している。ただし若干の例外もあり、また色指数とSiO2量の仕切り値は参考書によって多少の違いがあることがある。

[組織と構造]:岩石は鉱物の集合体である。したがって構成鉱物の形と組み合わさり方によってきまる組織と構造をもつ。組織と構造は、岩石の産状(成因)と深い関係がある。火成岩は、組織と構造の特徴により、さらに次のように分けられる。

A. 火山岩(噴出岩):マグマが地表に噴出し急冷してできた岩石。したがって結晶は小さく、しばしば天然のガラスを含む。顕微鏡で見ると、細かな基質(石基)に結晶面の明瞭な(自形)のやや大きな鉱物(斑晶)が見える。マグマの流動によって、鉱物が一定方向にならんだ流理構造を示すことがある。

B. 半深成岩(脈岩):地表に出る前に途中で冷却固化してできた岩石。肉眼でも斑晶と石基のまだら模様(斑状組織)が明瞭である。ガラスはない。

C. 深成岩:地下比較的深所で完全に結晶化してできた岩石。周囲との温度差が小さく徐冷するから、結晶は粗くかつ互いに角突きあって不規則な形態(他形)となる。

[火成岩の分類]:
表3はこのようにしてまとめた火成岩の分類表である。これは岩石学の基礎となるから、しっかり頭に入れて縦横に使いこなせるようになろう。
今日使われている岩石の分類は、19世紀にドイツを中心として、ZirkelとかRosenbuschといった人が、当時の最新の機器であった偏光顕微鏡を駆使して、岩石を詳しく記載したことに由来する(これを記載岩石学という)。
しかし、こうした区分は人間が勝手に線引きしたもので、天然の岩石がこの枠組みに従って出てくるというわけではなく、実際には中間的なものや分類基準に合わないものもある。そこで、ある成因系統の一連の岩石を他の成因系統のものと区別する、というやり方で岩石をシリーズとしてとらえる見方が行われるようになった。例えば、火成岩におけるアルカリ岩系・カルクアルカリ岩系・ソレアイト系の区分や、花崗岩におけるS-type・I-typeあるいは磁鉄鉱系・チタン鉄鉱系の区分などがそれである。後述の変成岩も同様である。
しかし基本はこの表の区分にあり、この中でおよその見当をつけられるようにしておく必要がある。

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表3 主な火成岩類の分類

 

3.3 変成岩類

[変成岩とは]:変成岩というのは、既存の岩石(堆積岩でも火成岩でも変成岩でもよい)が、その岩石ができた条件(温度や深度など)とは著しく異なる場に長期におかれたために、その岩石が融けることなく(融けたらマグマができて火成岩になる)、固相のまま化学反応を起こして、その場所に適合した新たな鉱物ができたり、鉱物が変形して組織が変わったりしてできた岩石である。正確に言おうとすると、このように長くなるが、簡単にいえば天然のセラミックス(焼き物)のようなものである。

[変成岩の区分]:一般に条件の異なる場とは、地殻に働く営力により、A. 地下深所に押し込められる、B. 熱い熱源が入ってきて焼きなおされる、C. へし折られたり破壊されたりする、などの場合がある。このでき方の違いにより、変成岩はまた、
 A. 広域変成岩(広域変成作用)、
 B. 接触変成岩(接触変成作用、熱変成作用とも言った)、
 C. 動力変成岩あるいは断層岩(Cataclasite, Mylonite)
の3種に区分される。

 

Aは最も広範囲に出現し、変成帯を形成し、造山帯の中核を構成する。大陸は広域変成作用の過程を経て形成されたと考えられるので、大陸地殻形成の機構として大変重要である。広域変成作用のメカニズム、すなわち造山運動のメカニズムについて、かつては地向斜造山論(古典造山論)で説明されたが、1970年代以降はプレートテクトニクスで説明されるようになった。
Bは高温の火成岩体(たいていは花崗岩)の周囲にでき、比較的小規模である。
Cは断層運動に伴ってできる。

[変成岩の分類と岩石組織]:変成岩の区分の重要なポイントも岩石組織である。

A. 広域変成岩は、偏圧(ストレス)のもとで鉱物が変形し再結晶してできるので、鉱物が一定方向に並ぶ性質(定向配列)がある。この性質を片理といい、その面を片理面という。この面で割れやすくなる。片理と言ったとたん、その岩石は変成岩を意味することになる。火成岩の流理構造も、鉱物が一定方向に並んでいるが、似て非なるものである。両者の違いは、これまた鉱物の組織による。流理構造はマグマの状態でできるから、鉱物は自由成長したあかしの自形を示すが、変成岩の場合は不規則な他形を示す。

B. 接触変成岩は、ほとんど変形せずに再結晶した岩石で、結晶は等方的に成長するので、互いに押し合いへしあいして結局小さな蜂の巣型の組織ができる。これをホルンフェルス組織という。その中に大きく成長した結晶がある場合があり、それを斑状変晶という。

C. 断層岩類は破砕組織が特徴的であるが、破壊だけではなく同時に再結晶も伴うことが多い。

[広域変成岩の分類と命名]:広域変成岩は、さらに組織の違い(結晶粒度)により以下のように区分される。より変化に乏しい方からならべると、
 
  原岩(変成前の岩石、例えば泥岩や頁岩)
  粘板岩(片理が生じ一定方向に割れる、鉱物は目に見えない)
  a. 千枚岩(片理が顕著でぺらぺら割れやすい、微細な雲母系の鉱物ができる)
  b. 結晶片岩または片岩(片理が発達し結晶が見える、縞模様も見える)
  c. 片麻岩(鉱物は粗粒で縞模様が発達する、片理はむしろ弱くなる)

広域変成岩は、a~cの3者をベースとして、それに特徴的な構成鉱物を少ないほうを先頭に持ってきて名前をつける。たとえば、ざくろ石黒雲母片岩(片麻岩)といった具合である。
  d. ミグマタイト:変成温度が高くなると岩石は一部が融けだすようになり、広域変成帯の中心にはそんな半融け状態の岩石が出ることがある。こうした変成岩と花崗質岩とが混じりあったような岩石を、ミグマタイトという。3階学生実験室前に、典型的なミグマタイトの大型標本が置いてあるから見てもらいたい。かつて花崗岩の成因について大論争があったが、その中心テーマはミグマタイトであった。

[岩石の形成条件と示標鉱物]:変成岩はできる条件(環境)によって、3系統に分けることが出来る。1つは地表近くでできた冷たい岩石が地下深所に押し込められてできる「低温高圧型変成岩」、熱い花崗岩の上昇に伴ってできる「高温低圧型変成岩」、中間の「中圧型変成岩」である。
変成岩には、岩石ができた時の温度や圧力条件を、端的に示す鉱物が含まれることがある。これらが示標鉱物である。その代表格が、Al2SiO5という化学式で表される鉱物で、化学式は同じでも結晶系の違う3種があり、比較的低温でできる紅柱石、高圧でできる藍晶石、高温でできる珪線石がある(こうした関係を「同質異像」あるいは「多形」という)。
低圧型変成岩は、紅柱石が安定な領域から珪線石の領域で、中圧型は藍晶石から珪線石の領域で、高圧型は藍晶石の領域で、それぞれ形成された一連の岩石であると考えられる。これらが都城博士が提唱した変成相系列である。
高圧条件の示標鉱物としては、藍閃石やヒスイ輝石がよく知られている。さらにヒスイ輝石が石英と一緒に出てくる(共生する)と、非常に高圧の条件を意味する。このように鉱物の共生関係を調べることで、変成条件をかなり正確に決めることができる。近年ではこれに時間的経過を加えて、岩石の変成履歴、P(圧力)-T(温度)-t(時間)パスを解析することができるようになってきた。
また3系統の変成岩ができる場所は、高圧変成岩はプレートの沈み込む場所で、低圧変成岩はその背後の火成活動に伴って、中圧変成岩はヒマラヤのように大陸同士の衝突帯でできると考えられている。

標本室には、代表的な変成岩の種類と変成鉱物(指標鉱物)が展示してあるので、両方を見比べながら観察してほしい。また日本各地の変成帯の代表的な標本も数多く集められているので参考にしてもらいたい。

3.4 断層岩類(動力変成岩)

[岩石の力学的性質]:岩石に力を加えてゆくとわずかに歪むが、力を抜くと元に戻る。この性質を弾性という。うんと強い力を加えて、岩石の強度を超えるとバリッと破壊する。これが脆性破断で、そうしてできたのが断層である。断層岩は、こうした断層に伴って産出する。
しかし同じ力を加えても温度が高いと、バリッといかずにズルズル変形(塑性変形)して引き延ばされる。こんな性質を延性という。飴や板チョコのようなものである。したがって地殻の深部から続く1つの大きな断層を仮定して、各種の断層岩の形成される場所を想定すると、地表近くのものは脆性的な性質を示すのに対し、深部では延性的な性質を示すと考えられる。こうした脆性-延性境界がどの辺にあるかは、地震の起こる深さの限界を知る上でも重要である(地震は岩石がバリッと割れることに起因する)。この境界は、鉱物によっても変形の仕方が違うので、きっちり線引きすることはできないが(岩石は鉱物の集合体だから各鉱物の含有量によって性質が違う)、おおよそ300~400℃くらいと考えられる。

[断層岩類の種類と性質]:断層岩が脆性的であったか、延性的であったかは、これまた岩石組織から判定される。最も地表近くで未固結の断層(岩?)は、断層粘土と断層角礫である。これが固結したような岩石がカタクレーサイトで、顕微鏡で見ると、破断して角ばった破片状の鉱物と微細な基質から構成される。横山衝上断層の試料などがこれに当たる。
さらに狭長なゾーンをなして、硬くて片理の発達した細粒の岩石が出ることがある。これがMylonite(ミロナイトまたはマイロナイト)である。延性変形は、鉱物の再結晶を伴いながら起こるので、そのようになるのである。細粒の基質を見ると流れたような構造が見え、中に比較的大きな結晶(残晶)が残っている。また急激な断層破砕の摩擦熱のため、融けたと考えられるガラス質の部分が見られる岩石もある。これをシュードタキライトといい、「地震の化石」ではないかとして注目される。標本室には著名なスコットランドヘブリディーズ諸島産のものがある。

[眼球片麻岩]:飛騨帯には、Mylonite 質の基質の中に大きな眼球状のカリ長石をもった岩石が出る。これが眼球片麻岩である。同じストレスをかけても、石英は比較的簡単に再結晶しながら細粒化するが、長石は脆性的でなかなか壊れないで残るし、場合によっては成長することがある。ヒマラヤのような大陸同士が衝突するような地帯には、大きな眼球片麻岩が発達する。
大きく成長するには少々ストレスがあったほうが良いのであるが、同じストレスをかけても成長するヤツもいれば、すぐへたばってしまうヤツもいる、というわけである。眼球片麻岩を見ながら、このことを自問自答してみよう。

3.5 堆積岩類

堆積岩類は、でき方によって以下のように区分される。

A. 砕屑岩類:泥・砂・礫など既存の岩石が、機械的な風化作用によって壊されてできた粒子が堆積し(この段階ではまだ堆積物)、続成作用によって岩石化したもの。
これらは粒子の粗さによって、泥岩・砂岩・礫岩に区分される。

B. 生物的堆積岩:石灰岩の多くや石炭などは生物の遺骸が集積し、続成作用を受けてできた岩石である。またチャートなどの珪質岩の一部も放散虫などの生物の遺骸が集積している。

C. 化学的堆積岩:海水に溶け込んでいた鉄が酸化されて沈殿した縞状鉄鉱やチャート・石灰岩の一部は主に化学的作用によってできたと考えられる。ただし化学的堆積岩といっても、何らかの生物の関与があることが多く、生物的堆積岩も生物の繁殖の背景には化学的過程があったであろうから、両者の線引きは余り明確ではない。

D. 火山砕屑岩(火砕岩):火山灰や火山岩片の集積によってできた岩石で、これらは火山岩と堆積岩の中間的領域にある。粒子の大きさにより、凝灰岩・火山礫凝灰岩・凝灰角礫岩などに区分される。

砕屑粒子と砕屑岩の分類

粒度 砕屑粒子 砕屑岩
2mm以上 礫岩
2~1/16mm 砂岩
1/16mm以下 泥岩

    

火山砕屑岩の分類

粒度(mm) 未固結 岩石
>32  火山岩塊 火山角礫岩/凝灰角礫岩
32~4 火山礫 火山礫凝灰岩
4以下 火山灰 凝灰岩

注:64㎜と2㎜を仕切り値とする区分もある。

 

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