ゴンドワナ各地の地質と岩石
南部アフリカ
Southern Africa(Zimbabwe、 Mozambique)
アフリカ大陸は、面積約2900万k㎡余、全アジアの2/3の広さがある。北西端のアトラス山脈(アルプス造山帯)と南端のケープ褶曲帯(古生代)を除いて、大半は先カンブリア時代の岩石を基盤とするアフリカ楯状地African shieldからなる。このうち始生代クラトンは3地域あり、南部のKarahari craton、中央部のCongo craton、 西部のWest African cratonである。Karahari cratonは、約27億年前のLimpopo beltで南側の Kaapvaal (Transvaal) cratonと北側の Zimbabwe cratonに区分される。Congo cratonは、13~11億年前のKibaran beltによって2分され、西側をAngola-Kasai cratonという。東側はさらに19~18億年前のUbendian beltにより南側のZambian cratonと北側のTanzania cratonに区分される。これらのクラトンの間には、Mozambique beltやDamaran beltなどの 6~5億年前の造山帯があり、全体を結合して巨大なAfrican shieldを形作っている(cf。Hunter、1981)。そこで原生代末~古生代始めの造山運動をまとめてPan-African(汎アフリカの意味)と言い、この変動がゴンドワナの各地に認められるので、超大陸の形成に関わる現象と考えられている。
南極・インド・オーストラリアは、スリランカ・マダガスカルとともに東ゴンドワナを構成するが、その西端はアフリカ大陸の東縁にかかると考えられる。またゴンドワナ全体の形成に関しても、西ゴンドワナとの結合関係を知る上でZimbabwe cratonからMozambique beltにかけての地域は重要なフィールドである。
Zimbabwe cratonは、主に花崗岩類とグリーンストン帯からなる。Mutare周辺のグリーンストン帯では、蛇紋岩化した超塩基性岩や含金礫岩が産出する。東縁には始生代岩層の上位に、原生代早期~中期のUmkondo Groupが分布する。これらは、玄武岩・ドロマイト・砂泥質岩等からなり、一部は変成するがほとんど非変成に近いものもある。Zimbabwe cratonの東縁からMozambique beltにかけて、変形・再変成した花崗岩(花崗片麻岩)が分布する。クラトンに近い側には32~25億年前の古いRb/Sr年代と10億年のAr/Ar年代を示すVumba花崗岩、次いで23億年のRb/Sr年代と5億年のAr/Ar年代を示すMessica花崗岩、同じく10~9億年と4.7億年のNhansife花崗岩、というように西から東へMozambique beltに向かって順次時代が若くなる傾向があり、Zimbabwe cratonを構成している古い花崗岩が、Pan-African変動を受けて行く様子が分かる。Umkondo Groupの一部(Frontier F)は、再変成した花崗岩に挟み込まれ、強く変形する。また境界から50~70km東方のVanduzi片麻岩やChimoio片麻岩では、変形とともに新旧2回のミグマタイト化が認められ、新期の方はPan-African期の部分溶融に対応すると考えられる。
本資料室の標本は、1998年に上記のような問題設定のもとに開かれたシンポジウムの現地巡検に、著者が吉田 勝(大阪市立大学)小山内康人(当時岡山大学)氏らとともに参加した際、採集したもので、Zimbabwe cratonの東縁からMozambique beltにかけての一連の岩石が収納されている。またLimpopo帯のチャーノカイト質片麻岩も1点ある。上記説明は、その時の巡検案内書(Grantham and Dirks、 1998)を参考にしている。
参考文献
- Grantham, G.H. and Dirks, P.H.G.M. (1998) Excursion guide: South-Eastern Zimbabwe and Western Central Mozambique, for Geo Congress’98, Gondwana X, IGCP368. 29p.
- Hunter, D.R. ed. (1981) Precambrian of the southern hemisphere. Elsevier, 882p.