鉱物・岩石基礎知識

1.地球の構造および組成と地質年代区分

1.1 地球の構造

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[地球の構造]:固体地球は、地殻・マントル・核の3層の構造から構成される(図1)。地球は、46億年ほど前に太陽系の他の惑星と同時に、隕石が集積してできたと考えられ、中心にある核は、鉄やニッケルに富んだ隕鉄に似た物質でできていると推定される。地球内部の層状構造は、地震波の性質と伝わる速さの解析から求められる。また地震波速度から密度が分かり、その密度に適合した物質は何か、推定が行われる。地殻とマントルの境界で地震波速度が大きく変わり、これをモホロビチッチ不連続面(モホ面、深度10~40㎞程度)といい、マントルと核の境界をグーテンベルグ不連続面(深度2900㎞)という。核の上部(外核)は液体であるが、深度5100㎞以下(内核)は固体と考えられる。マントル中にも物質的な不連続があり、マントル上部の深度400㎞くらいまでは主にかんらん岩からなるが、さらに深部ではより高圧に適合した物質に変化(相転移という)していると考えられる。鉱物とその集合体である岩石が、地球を構成する最も主要な物質である。

[地殻の構造]:地殻は、構成岩石と構造の違いにより、大陸地殻と海洋地殻に分けられる(図2)。大陸地殻は、海洋地殻に比べて2~3倍の厚さ(30~40km)があり、さらに上部地殻と下部地殻に分けられる。上部地殻は主に花崗岩質の岩石からなるので花崗岩質層(平均密度2.7g/cm3くらい、化学組成ではSiとAlに富んでいるのでシアルともいう)、下部地殻は玄武岩質の岩石(斑れい岩や高度変成岩)からなるので玄武岩質層(平均密度3.0g/cm3くらい、SiとAlについでMgが多いのでシマ)という。一方海洋地殻は比較的薄く、花崗岩質層を欠く。モホ面以下がマントルで、主にかんらん岩からなる(平均密度3.3g/cm3くらい)。
大陸地殻はさらに構造と構造運動の違いにより安定帯と造山帯(変動帯)に分けられる。大陸地殻は地域的に極めて不均質であり、さらに詳細な構造区分がなされている。これに対し海洋地殻は比較的均質であり、海洋底はほとんどの地域で玄武岩類から構成される。

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図2 大陸地殻と海洋地殻の構造
(島弧―海溝系の模式的な地殻断面図:
垂直方向で地殻・マントルの区分とプレートとは異なることに注意)

[プレートの構造]:大陸地殻・海洋地殻という用語と、大陸プレート・海洋プレートという用語との違いに注意が必要である。前者は、モホ面より上部の地殻の区分に関する用語であるのに対して、プレートとは(大陸プレートも海洋プレートも)、マントル中の深度100~200kmに存在する低速度層より上の部分(リソスフェアという)をさし、地殻の全部と上部マントルの一部が含まれる(図2)。
リソスフェアは硬い岩石からなり地球全体を覆うが、一部に大きな裂け目(中央海嶺や地溝帯など)があり、地球全体では10数枚の岩盤に分かれている。これらの1枚をプレートといい、太平洋プレートのように海洋を構成する海洋プレートとユーラシアプレートのように主に大陸を構成する大陸プレートとがある。ただし南北アメリカのように、1枚のプレートに大陸プレートの部分と海洋プレートの部分の両方を含む場合もある。

[プレートテクトニクス]:リソスフェアのさらに下部をアセノスフェアという。アセノスフェアの上部(低速度層)は、一部が溶けてマグマが発生し比較的柔らかいので、上位の硬いプレートは水平方向に移動することができる。中央海嶺では溶けたマグマ(玄武岩質)が大量に噴出して、海洋プレートが生み出され、側方に移動して海溝で大陸プレートの下に沈み込む。大陸プレートと海洋プレートを比べると、前者は上位に比較的軽くて厚い花崗岩質層があるので全体として軽く、後者はないので重い。したがって両者がぶつかると、重い方が沈む。この沈み込み帯が海溝である。海溝では上部にたまった堆積岩や火成岩が混じり合った複雑な地質体(付加体という)ができ、大陸側の縁では新たな火成岩や変成岩が形成される。
大陸プレートどうしがぶつかると、一部がのし上がって(衝上断層)ヒマラヤのような大山脈ができ、最終的には融合してゴンドワナのような巨大な大陸が形成される。

1.2 地殻を作る物質

[地殻やマントルを作る物質]:地殻や上部マントルは、「鉱物」を基本単位とし、その集合体である「岩石」から構成される。鉱物と岩石とはカテゴリーが違い、岩石では不均質性(部分的な変異や地域性)が顕著となるので、単に「いし」といってごっちゃにせず、きちんと区別しないといけない。
上部マントルは、かんらん岩やエクロジャイトから構成されると考えられる。それは火山岩中に、深部からもたらされたと思われるかんらん石の集合体(オリビンノジュール)などがあることから推定される。下部地殻は、高度の変成岩であるグラニュライトや玄武岩質の岩石(斑れい岩や角閃岩)などからできていると考えられている。

[地殻における元素の平均存在度]:表1に地殻を構成する主な元素の平均存在度を示す。これは地球の物質構成に関する重要な定数であり、1924年にClarkeとWashingtonが当時知られていた火成岩類の分析値をもとに算出したことに始まるので、それを記念してクラーク数(%を除いた数値のみ)と呼ばれた。地殻はその大半が酸素と珪素でできている。酸素と珪素を主成分とする鉱物を珪酸塩鉱物といい、これらが岩石を構成しているからである。原子の目で見ると、地殻は大きな酸素イオンの間に小さな珪素イオンが詰まっており(次章鉱物の図4参照)、その隙間に各種の陽イオンが入った構造をしている。アルミと鉄は重要な金属資源であると同時に、地殻中で第3位と4位に当たる豊富な存在度を持った元素である。

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表1 地殻における主要元素の平均存在度(wt%,ppmで表す)

1.3 地球史の時代区分(地質年代区分)

地球の歴史は、約46億年前の太陽系の誕生に始まる。これまで知られた地球最古の大陸を作る岩石の年代は約40億年前で(カナダのアカスタ片麻岩や東南極のナピア岩体)、46~40億年の間は岩石としての記録があまりないので「冥王代」とよばれる。ただし西オーストラリアのナリア地域には、40~44億年前のジルコンを含む岩石(珪岩)が出る。ジルコンや珪岩の存在は、その背後に花崗岩質の地塊があったことを暗示する。

地質年代の区分(表2)は、おもに化石、すなわち生物の種の変遷によって決められるので、古生代・中生代・新生代のように「生」の字を使う。
約40~25億年前までは、初源的な単細胞生物(ピルバラ地域のチャートの中から見つかっている)くらいしかいなかったので始生代(または太古代)といい、25~5.4億年前は、原始的な生物がいたという意味で原生代という。5.4億年以後になると、生物が大発生して化石が豊富に発見され、詳しい年代区分ができるようになるので、古生代~新生代をまとめて顕生代といい、それ以前をまとめて先カンブリア時代という。人間の歴史に例えれば、顕生代が歴史時代に、先カンブリア時代は先史時代に相当するだろう。

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表2 地質年代区分と主な地質現象

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