主な標本と見学コース

1.地球史40億年
(410号室,420号室)

40億年前:最も初期の大陸の岩石(花崗岩質~閃緑岩質の片麻岩)

東南極ナピア地域の高度変成岩(420号室)とカナダ・アカスタ片麻岩(410号室)。いずれも最も初期の大陸地殻を作る岩石である。

東南極ナピア岩体の花崗岩質片麻岩
東南極ナピア岩体の花崗岩質片麻岩:約40億年前にできた花崗岩質の岩石が25億年前に高度の変成作用を受けてできた岩石 39Y368
アカスタ片麻岩
カナダ・アカスタ片麻岩(トーナル岩質片麻岩)W606

36億年前の珪岩(石英に富んだ砂岩)

西オーストラリア・ナリア地域(410号室と420号室)。地球史最古の鉱物を含む地層の一部より採集した岩石。40億年より前の時代は岩石の記録がないため冥王代と呼ばれるが、この種の岩石から44~40億年前の鉱物(ジルコン)が発見されている。

ナリア地域の珪岩
ナリア地域の珪岩 02AY37
飛騨片麻岩から抽出したジルコン結晶の顕微鏡写真
ジルコン結晶の顕微鏡写真(注意:飛騨片麻岩から抽出したもの。ナリアのものではありません。)

35億年前のチャート

西オーストラリア・ピルバラ地域(410号室と420号室)。
地球史最初の生命の痕跡(単細胞生物)は、この種の岩石から発見された。チャートとは石英分の多い堆積岩。赤い部分はやや鉄分に富む。 W202

35億年前のチャート

34億年前の花崗岩質片麻岩

南インド・ダルワール地域(420号室)。インド最古の花崗岩起源の変成岩(ゴルー片麻岩)。初期地殻の花崗岩は、ややカリに乏しくTTGと呼ばれる。TTGとはトーナル岩Tonalite・トロニエム岩Trondhjemite・花崗閃緑岩Granodioriteの頭文字、いずれも花崗岩類の仲間。

花崗岩質片麻岩
34億年前の花崗岩質片麻岩。ダルワール地域の花崗岩質の変成岩をペニンスラー片麻岩といい、ゴルー地域から34億年前の古い時代のものが産出する。 09IN18A

27~26億年前のコマチアイト

西オーストラリア・イルガン地域(420号室と410号室)。地球史初期の火山活動に特徴的な岩石。始生代(40~25億年前)グリーンストン帯を構成する。当時地球はまだ熱く、マントルのかんらん岩が直接溶けて地表で急冷したため長い針状のかんらん石を含む(スピニフェックス構造という、西オーストラリアの乾燥地帯に生える草の名前に由来する)。 02AY11

27~26億年前のコマチアイト

27~25億年前の縞状鉄鉱

南インドと西オーストラリア。世界の鉄鉱床の大部分は25億±2億年前くらいにできた。鉄は酸素がないと沈殿しない。約27億年前に、光合成する藻類(ストロマトライト)が発生し、次第に大気の酸素が増えて鉄が沈殿したと考えられている。

縞状鉄鉱(27~26億年前,南インド・ダルワール地域)
縞状鉄鉱(27~26億年前,南インド・ダルワール地域)94IN172
縞状鉄鉱(25億年前,西オーストラリア・ハマーズレー地域)
縞状鉄鉱(25億年前,西オーストラリア・ハマーズレー地域)04AP10

27億年前の縞状鉄鉱に伴うストロマトライト構造の岩石

ストロマトライトは藻類が作った同心円状のコロニーである。27億年前に現れた最初の光合成を行う生物(シアノバクテリア)が作ったとされる。ただし当時の熱水沈殿物にも同様の構造を示すものがある。左は南インドダルワール地域のもの、右は現生のストロマトライトである。

27億年前の鉄鉱層にともなうストロマトライト様構造
27億年前の鉄鉱層にともなうストロマトライト様構造の岩石(インド・ダルワール地域)94IN163
現生のストロマトライト
現生のストロマトライト(西オーストラリア・ハメリンプール)

始生代の金鉱床(含金礫岩)

西オーストラリア・イルガン地域と南部アフリカ・ジンバブエ地域の始生代含金れき岩。
始生代のグリーンストン帯は世界的な金鉱床地帯である。金はれき岩やコマチアイト質の玄武岩に含まれる。ただし金品位はたいてい10g/トン以下で目では見えない。またウランを伴うこともある。

西オーストラリア・イルガン地域の含金礫岩
西オーストラリア・イルガン地域の含金礫岩 AY319
南部アフリカ・ジンバブエ地域の含金礫岩
南部アフリカ・ジンバブエ地域の含金礫岩 W337

25億年前の花崗岩(大陸成長の時代)

始生代末、地球各所で大規模な花崗岩体が形成され、大陸地殻が成長した。南インド・ダルワール地域のクロスペット花崗岩はそのひとつ。

クロスペット花崗岩の代表的岩相
クロスペット花崗岩の代表的岩相 95IN143
延々と連なるクロスペット花崗岩の岩山
クロスペット花崗岩は、南北300kmの大岩体を形成する。延々と連なるクロスペット花崗岩の岩山。

6~5億年前(ゴンドワナ大陸形成時)の片麻岩

東南極プリンスオラフ海岸竜宮岬。東南極の大部分は先カンブリア時代後期の花崗岩や片麻岩から構成される。

花崗岩質片麻岩(白)と角閃石片麻岩(黒)の互層
花崗岩質片麻岩(白)と角閃石片麻岩(黒)の互層[東南極竜宮岬]W474
角閃石片麻岩の変形(褶曲)構造
角閃石片麻岩の変形(褶曲)構造[東南極竜宮岬]W403

6~5億年前の高度変成岩

東南極テーレンとスリランカのチャーノカイト。ゴンドワナ大陸形成時の特徴的な岩石。大陸地塊が集合・合体する際には、境界地帯ではグラニュライト相という高温・高圧の変成作用を受ける。またこの時チャーノカイトという岩石(花崗岩と同様の化学組成を持つが暗青色で比重が重い)ができる。

ざくろ石チャーノカイト質片麻岩
ざくろ石チャーノカイト質片麻岩[東南極テーレン島]W407
ざくろ石チャーノカイト質片麻岩
ざくろ石チャーノカイト質片麻岩[スリランカ]SL06

地球史40億年(補足標本)

30~18億年前 スコットランドへブリジーズ諸島のLewsian Complex(410号室)
22~18億年前 インドラジャスタンのAravalli系(420号室)
20~18億年前 オーストラリアKimberlay地域, Halls Creek BeltとKing Leopold Belt(420号室)
19~16億年前 オーストラリアMt.Isa地域の花崗岩とPb-Zn鉱石(420号室と410号室)
18~10億年前 インドラジャスタンのDelhi系, Nagpurのインド中央構造帯(420号室)
18~10億年前 オーストラリアのAlbany Belt, Leeuwin Complex, Arunta Complex (420号室)
10~8億年前 マダガスカルの花崗岩(420号室)
6~5億年前 南極, 南インド(ケララ, 東ガーツ帯など), スリランカなど各地の高度変成岩やチャーノカイトほか(420号室)
5~4億年前 ノルウェーのカレドニアン変成帯(410号室)
4億年前以降 日本と山口県の地質を参照(410号室)

地球と生物の歴史
(410号室)

奥の壁側、中央より右側のケース、ゴンドワナ資料室と合わせてみると効果的です。

先カンブリア時代(右端のガラスケース)

地球の起源物質(隕石)、最古の大陸地殻(アカスタ片麻岩)、最古の鉱物を含む?岩石(ナリア珪岩)、35億年前のチャート(最古の生物の痕跡を含む?)、インド最古の花崗片麻岩、日本列島最古の岩石(上麻生礫岩、隠岐変成岩)など

古生代・中生代・新生代の生物(左手となりのガラスケース)

下段から上段に、古生代の化石(右から左へカンブリア紀→二畳紀)、中生代の化石、新生代の化石の順。化石は別の引出にも入っています。

先カンブリア時代の岩石
先カンブリア時代の岩石
古生代・中生代・新生代の化石
古生代・中生代・新生代の化石
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